ここもひとつの分岐点

どれに進むのかは

自分次第…





信じるもの、その先に-46-





合宿所に私たちが着いたとき、まだ青学も立海も来ていなかった。

それよりも私が驚いたことがある。


「ここ…。」


小さい頃来たことのある場所。

咲人と私が一緒だった頃、パパとママと4人で来たところ。

そして…


「先輩知ってるんですか?」

「えぇ、両親が私たちの為にデザインしてくれたところ。」


ずっと探してた場所。

来た時は小さくて場所が分からなかった所。


「ここを選んだのは?」

「竜崎先生と榊監督だ。」


後ろから答えたのは…


「景…吾…。」


咲人のことを言われてから初めて喋る。


「あーん?何かあんのか?」

「ううん…ありがとう。」


別にぎくしゃくしなかった。

前のような感じで喋れた。

美鈴の来る前のような感じで…。

二言三言しか喋ってないのにすごく喋った気がする。

首を横に振って改めて合宿所を見た。

ここなら解決できる気がする。


。」

「…!」


の後ろにはバスから降りてくる青学レギュラー陣。

そしてピンクのジャージを着た竜崎先生、

2人の女の子と3人の男の子がいた。


「来る時は何もなかったか?」

「えぇ、びっくりするくらいに何もなかったわ。」

「そっか。」

「…あのっ!」


突然の後ろから声がかかった。

三つ編みの子とツインテールの子。

竜崎先生のお孫さん…?


さん、ですよね?」

「そうだけど?」

「あたし、小坂田朋香っていいます!」

「あ…竜崎桜乃です。」

「青学の臨時マネね?」

「はいっ!」

「1年生?」

「はい!」


美鈴と同じ年か…。

きっと美鈴を信じてる子たち。


「美鈴、元気でやってますか?」

「…えぇ。」


やっぱり…。

純粋に美鈴のことを信じてるのね。

ほっとしたように息をつく朋香ちゃん。


「よかったぁ。あの子青学にいた頃あまり元気なかったから。」

「そう…。」


朋香ちゃんが美鈴の名を出した時からの表情が変わった。

美鈴のこと信じてる奴がまだいたのか。

そう言いたげな、驚きと呆れた表情。


。行こうか?」

「あぁ。」

「あ、それじゃ、また後で!」

「…えぇ。」


完全に建物に入って、2人が見えなくなってからは口を開いた。


「あいつら、まだ知らねぇんだな。」

「そうね…。」

は何も言わねぇんだろ?」

「えぇ。」


自分を被害者にして話すつもりはない。

でもここにいる以上、必ず巻き込むことになる。

きっと美鈴が話すでしょう。

自分を理解ってくれる人を増やすために。

覚悟はしてる。


「…あいつだな。」

「大丈夫。きっとすぐに分かってくれるわ。」


部屋で荷物を置くと、すぐに食堂へ。

ドリンクを作らないといけない。

練習はすぐに始まる。


「かれんさん。」

様…!?」


パタパタと走ってくる女性―――かれんさんはここの管理者で。

小さい頃よく遊んでもらったっけ…。


「お久しぶりです。」

「合宿は様の学校でしたか…。」

「他にも来てますが。」


歩く肩をすくめると私は持ってきたボトルをずらりと並べる。

25人分か…。


「お手伝いいたしましょうか?」

「あ…えと、きっと皆ここに来るからお茶をお願いします。」

「かしこまりました。」


に手伝ってもらいながらドリンクを作っていく。

美鈴も朋香ちゃんも桜乃ちゃんもまだ来ない。

多分美鈴が話をしているのでしょう。

偽りの涙を流しながら。


。」

「…精市?」

「大丈夫かい?」


精市の問いに私はドリンクを机に並べてから答える。

まっすぐと彼を見据えて。


「今は大丈夫。」

「青学のあの2人も?」

「覚悟はしてる。」


彼女たちは彼女たちの信じる道を進むだけ。

その道を決めるのは彼女たち。

私は何もできない。


「それなら安心だ。…?」

「どうしたの…?」

「誰か…来る。」


ダダダダ…と走る音が聞こえた。

1人じゃない…2人かな?


バンッ

ガシャンッ


「あんた…!」


彼女は…決めたんだ。

進む道を―――









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