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どんな敵でも怯みはしない
信じるもの、その先に-45-
合宿初日。
朝6時集合だけど私は5時に来ていた。
必要な物や一般部員への書置き、ドリンクやタオルの準備のために。
「…先輩!?」
「おはよう、チョタ。何か忘れ物?」
「はい、少しグリップを持っていこうと思ってたんですけど…先輩、今5時30分ですよ?」
「知ってるわ。ただ少しだけ仕事しようと思って。」
チョタが来たことによって一度休めた手を再び動かしだす。
私が物を動かしている音以外は何も音がしない。
不思議に思って顔をあげるとチョタはじっとこっちを見ていた。
「…何?」
「手伝います。」
「そう?ならそこのボトルを取ってくれる?」
「はい、どうぞ。」
チョタからボトルを受け取ってドリンクを注ぐ。
それからタオルを準備して、メモを書く。
ドリンクやタオルのおいてる場所や使ったものを置く場所とかを書く。
ただ…それを守るような人がいるのかな…。
平部員にすら嫌われてる私の言葉…聞いてくれるかな?
「…先輩?」
「…っ!ごめんなさい、何?」
「そろそろ行きませんか?」
時計を見ると5時50分。
そろそろ行かないと侑士や亮に何か言われるかな。
私は立ち上がって荷物をとった。
「うん、行こうか。」
「先輩、持ちますよ?」
私は首を横に振った。
「…自分のものは自分で持つわ。それに、私もチョタも何か言われる。」
「…わかりました。」
チョタはわかってくれた。
チョタを守るためだけじゃない。
この事態を広げないようにするためだって。
校門へ出るとすでに何人かが来ていた。
「…おはよう。」
「おはようございます。」
「おう、。遅かったじゃねぇか!」
「準備してたからね、今日の平部員の分。」
「そんなこと、よくよりますね。」
「まぁね。…ジロちゃんは?」
「バスの中で寝てるぜ。」
ジロちゃんらしい。
思わずクスリと笑うと最後の人物が来た。
「ハァッ…ハァッ…遅れ…ましたぁ…っ!」
息を切らしてやってきた美鈴。
大量の荷物とくるくると巻いた髪。
立海を味方につけるつもりなのかな…?
まぁ、どちらでも構わないけれど。
「まだ時間になってへんで?」
「…ホント…ですかっ?」
チラッと時計を見ると2分前。
ギリギリじゃない…。
「あいつ最後でしょう?」
「えぇ。バスへ乗りましょう。出発しないと間に合わないわ。」
荷物をバスに積んで乗る。
美鈴や侑士たちは後ろで座っている。
私は寝ているジロちゃんの横に腰をおろした。
「ん…ちゃん…?」
「おはよ、ジロちゃん。起しちゃった?」
「別にぃ…。」
ジロちゃんは一度起き上がってキョロキョロと辺りを見回す。
その後私の膝の上に頭をのせた。
「膝枕して?」
「もうしてるじゃない。」
「…なぁ、。越前は?」
後ろから身を乗り出して聞いてきた岳人。
「は青学と来るわ。『リョーマを時間に間に合うように起こすから氷帝の時間には間に合わない。だからあたしは青学と行くよ。』だって。」
「竜崎先生は知ってんの?」
「もちろん。」
「美鈴ちゃん…何もしなかったね。」
「何かしてくると思ったけどね。」
美鈴のあの表情。
初めて見せたあの表情はいまでも忘れられない。
「何かあったんでしょう?美鈴にも。」
絶対に何かある…。
合宿では必ず何かを仕掛けてくる。
覚悟はできてる。
私は美鈴に屈する気はない。
「ちゃんはこの合宿で解決すると思う?」
「わからない。でも、美鈴は動くわ。」
動かないはずがない。
後ろを見てみると嬉しそうに笑っている美鈴。
そして周りで笑ってる侑士・亮・ムネ・萩。
景吾は私たちの後ろ、美鈴たちの前で作業をしている。
一度目を閉じて開く。
見るのは岳人・ジロちゃん・チョタ・若。
「大丈夫。何があっても私は負けないから。」
「ちゃん。」
「何?」
「無茶だけはしないでね。」
「…うん。」
「いくらがいたとしてもちゃんの体はちゃんが守るしかないの。わかってるよね?」
私は静かに頷く。
最後に自分を守るのは自分自身。
それはわかってる。
「は割り切ろう、割り切ろうって考えて無茶してる。」
「岳人…?」
「俺は無茶するなとは言わねぇ。ただ、無茶しすぎて倒れるな。」
「…うん。」
それから誰もしゃべらなかった。
後ろのにぎやかな声を聞きながら、私たちは静かに合宿所に着くのを待った。
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冒頭部分 ザ・レギュラーより