全員に伝えられる時。
3校合宿。
それは、解決への道―――
信じるもの、その先に-44-
「集合!」
レギュラーが監督の声によって集まった。
そこにはもちろん私と美鈴もいる。
今日、か…。
皆に伝えられるのは。
私がひとつ息をつくと監督が口を開いた。
「来週より1週間の合宿を行う。」
特別な反応はない。
1週間の合宿なんて普通だったから。
私はすっと立ち上がってプリントを配る。
「何だと…!?」
「よりによって青学と立海やん…。」
ほぼ全員が青学・立海との合同合宿に驚いていた。
驚いてなかったのはジロちゃんだけ。
それは事前に知っていたから。
「この合宿はプリントに書いてある通り、青学・立海との合同合宿だ。これはレギュラー・準レギュラーの参加となる。」
プリントに軽く目を通す。
"臨時マネージャーあり"とが紹介されている。
名前は書いてないけれど。
「質問はあるか?」
「あの…臨時マネージャーってどなたでしょうか?」
「藍川か。今回の合宿のマネージャーは「あたしだよ。」
榊監督の言葉をさえぎって現れたのは。
景吾を睨みつつ階段を降りてきた。
「越前…!?」
は私の横に立って、堂々と言う。
「合宿の間だけの臨時マネ、越前。よろしく。」
一気にざわついた。
レギュラーは隣の人と話している。
そんな中美鈴はは睨んでいた。
邪魔だ…そういう目で見ている。
多分も気付いているでしょう。
一瞬美鈴を見てからまた前を見た。
「あたしは初めてマネージャーはするけど…仕事はする。この合宿は必ず私情が入るだろうね。でも仕事は絶対するから。」
そこでレギュラーの目が分かれた。
私を睨む人と美鈴を睨む人に。
美鈴はそれに気付いている。
睨まれるとわかってて私に向けてクスリと笑った。
「今、我々には問題がある。しかし、今回は青学と立海もいる。絶対にテニスに私情を持ち込むな。他の2校のレベルアップを邪魔する者は最初から来るな。いいな?」
「「「はい!」」」
榊監督はわかってるんだ。
今回の合宿の意図を。
テニスのレベルアップだけじゃない、解決の為なんだ、って。
だからテニスに私情を持ち込むな、と。
それは練習以外では私情を持ち込むことは構わないと言っているのと同じ。
「それでは…行ってよし!」
監督のいつものポーズと共に皆散った。
私はと水道へ向かう。
「仕事はすぐわかると思うけど…。」
「何となくわかる。」
「そう?」
仕事自体は簡単。
教えるようなことは特にない。
仕事をしてる横ではずっと周りを見ていた。
美鈴が来るだろうと予想しているのでしょう。
美鈴はきっと来る。
ドリンクを取りに来るだけじゃなくて…
「青学と立海を味方にして合宿しようって言いたいんですか?」
「別にそういうわけではないわ。」
美鈴は怒りを隠せずに来た。
ただ少し笑ってる。
「青学はあなたがいた所でしょう?あなたのことを信じる人もいると思うわ。」
「レギュラー陣は絶対ないと思いますよ。今回はレギュラーのみの参加でしょう?」
「マネージャーの存在もあるわ。それに立海は全員が全員私のことを信じてくれてるわけじゃない。」
作ったドリンクを水道の上に並べて振り返る。
その瞬間―――。
パシンッ
「…っ!」
頬に平手打ちをくらった。
あまりにも突然で私もも何も言えなかった。
「黙れ…!」
美鈴の変わりぶりに驚いた。
何があったの…?
「み…すず…?」
思わず名を呼んだ。
するとハッとしたようにこっちを見た美鈴。
「…なんでもありません。」
そう言ってドリンクボトルをとって走って行った。
「何だったんだ?あいつ。」
「さぁ…?」
あんな美鈴初めてだった。
私を憎むように睨んでいた美鈴。
いつも見下したような睨みと笑みだったのに。
私…何か…言った…?
「、気にするな。別にお前は何もしてないよ。」
「うん…。」
私は気付かなかった。
美鈴が苦しんでいることに。
どうしようもできなくてあやふやになってるなんて。
そしてそれに気付いてる人がいるなんて。
私にはわからなかった。
今、願うのは合宿が無事に迎えられること。
そして解決できること。
私はさっきの美鈴の表情を少し気にしながら作業を続けた。
合宿までの1週間、何かが起こると思ってたのに―――。
意外と何もなかった。
美鈴も何もしなかったし、何も言わなかった―――。
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