事実と意見を
私の想いを
そして解決に――――
信じるもの、その先に-41-
「精市。」
「やぁ。もう越前も芥川も来てるよ。」
「ごめんね、3人とも急に呼んで。」
「別にあたしは構わない。でも1人増えてるぜ?」
「え…?」
「…。」
後ろを見ると丸井ブン太がいた。
彼が好きなジロちゃんがはしゃぐ様子がない。
それくらい彼が真剣な顔で。
それくらいジロちゃんから彼への敵意があった。
「丸井、答が出たのかい?」
「あぁ。、少しいいか?」
「…えぇ。」
「!」
「大丈夫よ、。廊下で話すから。」
「…何かあったら呼んでね?」
「うん。」
廊下は静かだった。
私が扉を閉めると同時に丸井さんは頭をさげた。
「わりぃ!」
「…何が?」
「その、酷いことばっか言ってよ…。」
「…そう。」
「正直答えはねぇ。でもお前に謝らなくちゃいけないって思ったんだ。だから来た。」
「それは…答じゃないの?」
驚きの表情と共に丸井さんが顔をあげた。
『答はない』、確かにこの言葉は答じゃない。
でも、その後の言葉。
それが答の気がする。
「謝らなくちゃいけない…その言葉が答の気がする。」
「謝ることから逃げてる…っつうことか?」
「違う?」
「…なるほどね。」
彼がにっこり笑った。
つられて私も笑う。
「、サンキューな。」
「…どういたしまして、ブン太。」
「あ…。」
「どうしたの?」
「名前…。」
「そういうことでしょ?あなたが『』って呼んだってことは。」
私は名前で呼ばれたから名前で呼ぶ。
だからブン太って呼んだ。
ただ…景吾たちは今じゃ『』って呼ぶ。
でも私は名前で呼ぶよ。
皆のこと信じてるから。
皆大切な人だから。
「中に入りましょ。精市たちに話すことあるから。」
「俺もいいのか?」
「あまり好きじゃない表現だけど敵じゃないから。だからどうぞ?」
そう言って病室に戻る。
たちは心配そうな表情だったけど私は微笑んで返した。
『大丈夫』って意味で。
「…。」
「ブン太は大丈夫よ。ここにいるってことはそういうこと。」
「あとはジャッカルと赤也か…。」
「彼らもバカじゃない。もうそろそろ気付くんじゃない?」
精市も私も頷く。
「さぁ、本題に入ろうか。」
周助の言葉にみんなの表情が一気に変わる。
さっきよりも真剣に。
私が呼んだから…かな。
確かにこれはすごく大切なこと。
何かが変わるかもしれないこと。
でも…そんなにシリアスなことではない。
「さっき青学にいたの。だから周助と来た。そこで氷帝・青学・立海で合宿することになったの。」
「3校で…!?」
「聞いてないC。いつ決まったの?」
「さっき。国光がこれから竜崎先生に話すって言ってたから…連絡が来るのはもう少し先のことかな。期間は1週間。参加者は3校のレギュラー。そして…にも参加してほしいの。」
「あたし?」
「うん、臨時マネとして。別に強制じゃないわ。」
「藍川がが1人になった時に攻撃しないように、ね。」
「あたしはのガードマンか?」
「ダメかい?」
しばらくと周助が睨みあう。
やがてふっと息を吐き出したのはだった。
「いいよ。あいつがを傷つけるならあたしは守るよ。」
「ありがとう、。」
「でもあたしは何もできないぜ?マネ業。」
「基本的な家事ができるならいいわ。」
「んー。」
ガシガシと頭をかく。
言わないけど…に仕事をさせる気はない。
マネージャー業は私と美鈴の仕事。
肩書きは臨時マネだけど、はマネージャーではない。
こう言ったら怒られそうだね。
「、どうして合宿をしようと思ったの?」
「私も詳しくは知らない。だから周助に聞いたほうがいいと思う。」
「解決の為のきっかけが欲しいんだよ。もうこれ以上辛いを見たくないから。早く解決する為に僕が提案したんだ。」
「解決しないとしても、か?」
「それならそれで構わない。でも何かが変わるって信じてるから。だから合宿の提案を受け入れたの。」
「がEなら俺はEよ。ね、丸井くん?」
「ん?あぁ、そうだな。」
ジロちゃんがにっこり笑って、
ブン太がガムを膨らませる。
「俺も参加するよ。それまでには退院できそうだし。」
「でもテニスはできねぇだろ?」
「その分僕が上手くなるよ。」
「じゃあ、私はそれのサポートね。」
精市がふわりと笑って、
が空気を和ませて、
周助がそれを引き取る。
私はこんな日常にいたはずだった。
でも今はこの日常を取り戻す為に耐える。
皆がいるから大丈夫。
温かい人がいるから―――。
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