私は何で…
何で本音を言ったんだろう
叫んだの…?
信じるもの、その先に-39-
「でも今は割り切らなきゃ何もできないのっ!」
何でこんなことを言ったんだろう。
自分でもよくわからない。
気付いたら言っていた。
確かに言ってることは間違いじゃない。
でも何で岳人に言ったんだろう。
ジロちゃんにもにも言ってないのに。
何で…私を理解ってくれない岳人に言ったんだろう。
『そんな事』…?
のことが『そんなこと』だと思うの?
「私が一番ショックなことはのことだよ。」
歩いて去る岳人の背中に向かって呟いた。
でも私が『そんな事』って言ったのは…。
岳人に対して強い私でいたのは…。
岳人が迷っていたからだよ。
迷っている人には強い私でいなきゃ答が出ないから。
私は一度振り返った。
「咲人、これでいいんだよね?強い私でいいんだよね?」
それだけ言って私はそこを去る。
手には咲人のスイトピーを持って。
このスイトピーは咲人の写真の横に飾ろう。
そして…それが枯れるまでには何かが変わってたらいいね。
1つでいいから。
氷帝テニス部のことか
のことか
私のこと。
帰りに一輪挿しを買って帰る。
それに水をはり、持って帰ったスイトピーを挿した。
それは咲人との写真の横に。
2人共笑顔の写真。
2人で撮った最後の写真。
その写真を手にとる。
「さっき、会ったのにね。」
何でこんなにも懐かしく思うのかな。
さっきを顔を見なかったから?
…岳人とのことがあったから?
よくわからないけど懐かしく思う。
それをしばらく眺めていた。
10分かもしれないし30秒かもしれない。
とりあえず眺めていた。
それを終わらせたのは1つの電話だった。
「はい、です。」
『か?俺だ、手塚だ。』
「何?」
『今不二といるのだが、話がある。』
「…それは外部にもれちゃマズイ?」
『そうではないが…なんというかだな…。』
『まずはに知って欲しいことだよ。』
「周助…。」
『やぁ。』
「…いいわ、家に来て。」
『場所は?』
「あ…そっか…。今どこにいるの?」
『青学だけど?』
「ならそっちに行くわ。15分くらい待ってて。」
『じゃあ部室にいるからノックして入っておいで。』
「了解。」
電話を切って写真を元の場所に戻す。
また後でね、咲人。
財布と携帯を鞄に入れて家を出た。
誰もいない家。
帰ってくるのは私だけ。
パパとママ、いつ帰ってくるんだろう。
いつでも帰ってきてもいいのに。
それでも電話をかけられない私。
突き放されることはないだろうけど。
パパとママは忙しいってわかってるから。
ゆっくり電話できないと思う。
だから待つの。
いつか帰ってくると信じて。
そのときまでには終わらせたいね。
今のわたしは見て欲しくないもの。
人から信じてもらえない私なんて。
私は信じているのにね。
「先輩じゃないッスかー!」
「桃?」
「学校行くんですよね?」
「うん、桃も?」
「手塚部長に呼び出しくらっちゃって。」
ヤバそうーって顔の桃。
反対に私はクスリと笑った。
「そんなんだったら私が呼び出される必要ないじゃない。」
「あ…。」
「話がある、とは言っていたけれど…。」
それが何だとは言ってない。
だから答えはこれだけ。
「ふぅん…。」
「桃ー!」
「あ、英二せんぱーい!」
校門のところで英二と会う。
笑っていた英二は私を見た途端バツの悪そうな顔をした。
「…その…。」
「…咲人のこと?」
英二が私に対して何か言うとなればこれしかない。
バツの悪そうな顔をしているのなら尚更。
私は英二の次の言葉を待つ。
私も桃も何も言わない。
「その…ごめんっ!」
「何で…謝るの…?」
自分が悪いと思ったから謝る。
それは若から聞いた。
でも私が聞いているのは違う。
何のことに対して謝っているのか。
それを聞いている。
「咲人の…こと。嫌なこと思い出させちゃってごめんにゃ…?」
「…気にしないで?私が咲人を忘れた事はないから。」
「でも…!」
「私は大丈夫だから。ほら、行こう?」
私は英二の腕をとって軽くひっぱる。
そんなの気にしなくていい。
別に咲人のことを誰が知っていてもおかしくはないから。
ただ…双子って知られるのは嫌だ。
私が話すまでは誰にも知られて欲しくない。
景吾とは知っちゃったけど。
もう…これ以上は増えて欲しくない。
だから英二のことは気にしなくていいんだよ?
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