俺だって聞きたくなかった
でも・・・!
心配なんだ・・・!
信じるもの、その先に-35-
「大丈夫だから。」
そうちゃんに言われて俺は外に出た。
でも心配だったから外で座っていた。
「ジロー先輩、帰らないんですか?」
「うん。心配だから。」
日吉に言われても長太郎に言われてもそう答えた。
跡部に何かされそうで怖いんだ。
もうちゃんが傷つくところは見たくない。
がついているけど不安だから。
跡部は突然話しだした。
ちゃんのこと・・・というよりも彼のこと。
混乱したちゃんの声を聞いて入ろうかと思った。
「ちゃ・・・!」
突然ちゃんの声が聞こえなくなった。
どうやらが意識をとばせて落ち着かせたらしい。
俺は膝をかかえて2人を待つ。
ちゃんの双子・・・・。
話さなかったのは・・・怖いから?
ちゃん、優しいからね。
自分の責任だと思ってるんじゃないの?
そう思うと跡部に怒りがわいてきた。
同時に哀しくなった。
別にちゃんに同情してるわけじゃないけど・・・。
ちゃんの優しさが今は哀しい。
「。」
の家に着いてからしばらくして口を開いた。
ちゃんはのベッドで寝ている。
だからギリギリのことを聞いてみることにした。
「ん?」
「ちゃんは怖かったから隠してただけなのかな。」
「どういうことだ?」
「だってちゃん、怖いだけで自分のこと隠すっていうのはあんまりないC。他の理由もあると思うんだ。」
彼の存在を消すためじゃない。
だってちゃんは彼の名を呼んだ。
忘れた・・・訳じゃない。
でも・・・。
「はで考えがあるんだろ。あたしらが干渉することじゃない。」
「だけどっ!」
「あたしらが!・・・あたしらが今しなきゃいけないのはどうやってを落ち着かせるかだ。栗本咲人との関係を知ることじゃない。」
「あ・・・。」
そうだった。
俺たちは今、それを知る場合じゃない。
どうやってちゃんを落ち着かせるか、だ。
彼のことはあとでも聞ける。
「ジロー、おまえは何も聞いてないと思わせろ。」
「聞いてない・・・?」
「あぁ。は誰にも知って欲しくなかった。だから動揺してる。」
「だから・・・俺が知ってることを知ったら余計に落ち着かないって?」
はうなずいた。
ちゃんを落ち着かせるため・・・。
「俺は・・・知らないほうがよかったのかな。」
「そんなの、もう知っちまったんだ。仕方ない。」
「・・・うん。」
これだけの会話。
俺たちは静かにちゃんの目覚めを待っていた。
もうこれ以上喋れなかったから。
ちゃんは同情を嫌う。
でも哀しいよ。
ずっと1人で抱え込んでいたんだね。
自分の辛さを誰にも話すことなく。
責められることを恐れて、話さずに。
どっちが辛いんだろうね。
でもちゃん。
俺もも皆責めないよ。
だってずっと君は1人で悩んでたから。
「・・・・。」
「ちゃん・・・。」
いつから目を覚ましてたんだろう。
静かに天井を見つめるちゃんがいた。
ここからは何も知らない俺。
でも・・・何を言えばいいんだろう。
「・・・。ここは?」
「あたしの家。部室からここに連れてきた。」
「そう・・・ジロちゃん?」
「なぁに?」
ちゃんに声をかけられてはじめて声をだせた。
それまで声を出すということができなかったみたいに。
「ちゃん、大丈夫?」
「うん・・・。」
よかった・・・。
ちゃん、大分落ち着いてるみたい。
表面上かもしれない。
でもそれくらいの冷静さはあるんだ。
「ジロちゃん、聞かないの・・・?」
「何を?」
「何があったか、って。」
知ってるから・・・なんていえない。
余計にちゃんを傷つけるだけだから。
俺は少しだけ笑って言った。
「ちゃん、辛い顔してるから。聞けないよ。」
本当に辛い顔をしてる。
今、聞くと本当に壊れそうだよ。
半分本当で半分嘘。
ごめんね、ちゃん。
でもそうすることしかできないんだ。
他でもない、ちゃんを救うために。
「ごめん、ジロちゃん。」
「何で謝るの?」
ちゃんは悪くないのに。
「・・・わからない。でも謝りたかったんだ。」
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