別にあたしがどうしようが
何しようが
あたしの勝手だろう?
信じるもの、その先に-34-
「なぁ、跡部。」
あたしはあくまでも冷静に問う。
ここで怒りをぶつけるわけにはいかない。
あたしにそれは許されていない。
「何でに確かめた?そこまで知っているならが知られて欲しくねぇということもわかってたんだろ?」
はきっとしばらく起きない。
だからあたしはギリギリの質問ができる。
「わからねぇであんな質問できるか?」
「じゃあ何でだ?」
あたしはをソファーに寝かせて跡部を睨む。
跡部はわかってない。
が何のために何をしようとしているのかを。
「別にお前には関係ねぇだろ?」
「あたしはを支えたい。だから知りたい。」
を支えられるなら何でもする。
だっては・・・・。
「何でそこまであれの為に動く?」
「は自分のために動いてるわけじゃない。」
そう、は自分のためじゃない、誰かのために動いている。
自分がどうなったとしても動く。
「誰かがを守らなきゃいけない。だからだ。」
あたしはを支えたい。
守りたい。
だからの側にいる。
を守る。
「理由としてはおまえらと一緒だろ?」
「確かに忍足や宍戸、岳人はそうだろうな。」
を傷つけ、あいつをいじめていると信じている忍足たちはあいつを守るために動いている。
あたしと同じだ。
・・・ん・・・・?
「忍足、向日、宍戸・・・・。おまえと樺地と滝はどうした?」
「滝はどうだかわかんねぇ。理由がそれだけとは限らねぇだろ。樺地はあいつのことを信じているが俺が美鈴側にいる分、何も出来ないだけだ。」
・・・やっぱそうか。
樺地は今まで何もしてない。
ジローもそう言っていた。
「樺地はちゃんに何かしたことがない。」
と。
やっぱあいつはを信じてるんだ。
「跡部は?」
「俺は本当のことが知りたいだけだ。」
「だからを傷つける、と?」
「美鈴がそれで本当のことを言うならな。」
だからをボロボロにする?
そんなの自分のエゴだろ?
一気にわいてきた怒りを何とか抑える。
「跡部・・・。」
「安心しろ。あいつには手をださねぇよ。」
「さっき充分に傷つけたがな。」
あたしは鼻で笑って跡部を睨みつける。
もう怒りなんて通り越している。
跡部をバカにすることしかできない。
「あれは・・・まぁな。」
「は栗本咲人のことを絶対に話さなかった。かけがえのない人としか言わなかった。」
「何故あいつが双子の兄と言わなかったと思う?」
「え・・・?」
が双子の兄と言わなかった理由・・・?
栗本咲人は死んだという。
それを責められると思ったから・・・・?
「怖かったから・・・・か?」
「その理由だと自分のために動いてると思わねぇか?」
「・・・・!」
が唯一自分の為に動いている・・・。
栗本咲人って・・・一体・・・?
「跡部。おまえは真実を知りたいと言ったな。」
「あぁ。」
「・・・真実って別にそこにいなくてもわかるんじゃないか?」
ならこう言うだろう。
ただこんな状況では言わないだろうがな。
もう・・・ここにいてもムダだな。
跡部ともう話すことはない。
あたしと決定的に違うこと。
やっぱとどう接するか、だな。
真実を知りたいっていうのは一緒だから。
あたしはを抱き上げて立ち上がった。
「別に真実をどんな方法で知るかなんて俺様の自由だろうが。」
答えられなかった。
あたしは何も言えずに部室を出た。
雨は止んでいる。
・・・・家に連れて行くか。
「・・・・。」
「ジロー!?」
扉の横でジローが小さくなっていた。
ずっとあたしたちの会話を聞いていたんだろう。
すごく悲しそうな顔をしている。
「どういうこと・・・・?ちゃんに・・・・お兄ちゃんがいるの?」
「・・・そうらしいな。」
「俺・・・・!ちゃんの辛いこと、全然わかってない・・・!」
「ジロー、落ち着け。」
ジローは震えている。
それが後悔しているのか自分に怒っているのかショックなのかわからない。
だけどこのままのジローもも放っておけない。
「ジロー。」
「・・・・何?」
「家、来るか?少し話そう。」
ジローはこっくりとうなずいてあたしについてきた。
あたしとジローは何も喋らない。
というよりも何も喋れなかった。
ただ静かに歩いていくだけ。
栗本咲人の存在。
そしての痛み。
ジローの辛さ。
あたしには何もわかっていない・・・。
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