どこを目指す?

―――皆と笑い会えるところを。

皆・・・みんな大好きだから。





信じるもの、その先に-32-





氷帝学園中等部、男子テニス部。

1人の少女が変わっていた。

弱い、そう言って跡部たちから逃げていた少女が逃げなくなった。

人の目をしっかり見るため眼鏡をとった。

そう、1人の少女は強くなったのだ。

ある1人の後輩が来たことにより――――――





















「・・・ドリンクはOK,と。」


2日ぶりの部活。

ドリンクは作り置きがあったし、タオルも残っていたから支障はない。

だけど汚れたタオルは増えるばかり。

そのタオルも干し終えたし、ドリンクもできた。

掃除・・・しようかな、汚いし。

私はロッカー横にある掃除箱から箒とかを出す。

体の調子はあまりよくなくてもしっかりできるのね・・・。

掃除を始めて少したった頃。


ポツ・・・ポツ・・・


雨・・・?

外を見れば大降りの雨。


「・・・タオルッ!」


景吾たちは部室に引き上げてくるでしょう。

レギュラーの人数分のタオルをテーブルの上に置いておく。

私は急いで干していたタオルをとりに行った。


「おー、。」

!?何してるの、あなた!」

「雨降ってきたと思ったらここにタオルがあったからな。」


いつも干してる場所ではタオルを取り込んでいた。

びっしょり濡れている

風邪をひいたら大変。

急いでタオルを取り込んだ。


、こっち来て!」


まだ乾いているタオルが部室にあるはず。

とタオルを部室前に運んだ。

そこには誰もいない。

でも・・・ドアが開いている。


・・・ちゃん・・・!」


・・・え・・?

どういう・・・こと?

私は掃除をしていた。

それで雨が降ったからタオルを取り込みに行った。

その間に・・・部室がぐちゃぐちゃになっていた・・・?


「何・・・これ・・・?」


自分達がびしょびしょなのも忘れていた。

何で・・・部室が荒らされているの?

何で皆私を疑うような目で見るの?


「お前がしたんじゃねぇの?」

「違う・・・!私は掃除をしていた!」

「やけど、部室におったんはお前だけや。」


だから・・・私がしたって言うの!?

そこに美鈴がずっとコートにいたことに疑問はないの?

私は違う・・・・っ!

美鈴に目をやるとニヤリと笑った。


「・・・っ!!」

っ!」


カッとなった私の名をが呼ぶ。

その言葉に私はピタリと動きを止めた。


「あ・・・。」

、落ち着け。まだ誰がやったのかわかってないだろ。」

「・・・うん・・。」


ここで殴りかかってたらきっと美鈴はそれを利用するでしょう。

がいてくれて助かった・・・。

・・・私が自棄になっちゃダメ。

動かなきゃ。

私は景吾たちがいるにも関わらず、部室に入った。


「何をしている?」

「見てわからない?片付けないといけないでしょう?」

「お前が荒らしたんとちゃう?」

「・・・・それで私に何のメリットがあるの?」


だって私は仕事をする為にここにいるのよ?

皆のそばにいたいからじゃない。

皆が大好きだから支えたいの。

だから荒らしてメリットなんて何もない。


「美鈴に罪をかぶせようとしたんじゃねぇのか?」

「ずっとコートにいる美鈴にどう罪をかぶせろ、と?」


この言葉で誰かが気付くといいのだけれど。

盲目的な彼らは・・・どうだろう。


「・・・・美鈴が仕事してへん、って言いたいんか?」


そうね、私の思っている仕事はしてないわ。

でも・・。


「彼女がしているというならそうじゃないの?私の考える仕事と美鈴の考える仕事が一緒なはずないでしょう?」

「しているのか、美鈴?」


それまで黙っていた美鈴が突然泣き出す。

演技・・・か。


「グスッ・・・・酷いです、先輩・・・・わた・・・し・・・ちゃんと仕事してますよ・・・!」


その『先輩』は誰なんだろうか。

私?

それとも景吾たち?

別に私は疑ってない。

支えるという仕事事務的なことをしてない、とわかっているから。


「・・・・っ!」

「・・っ!」


一発、殴られた。

私は何もしてないのに・・・。

そして、あなたたちは久々に苗字で呼んだね、私のこと。

今まで『』って呼んでくれたのに・・・。

美鈴が来てからずっと『』だっけ?

もう、どちらでもいい。

私を殴った岳人を見据える。


「美鈴、泣いてんじゃねぇか!」

「・・・私が何か言った覚えはないわ。聞いたのは亮でしょう?」

「そもそも部室荒らしがきっかけだろ!」

「だから私はしてないと言ってるでしょう?」


再び手を動かした。

片付けないと何もできないから。


カチャ



「・・・?」

「これはどこですか?」


若もチョタも動いてくれた。

片付ける為に・・・。

これからのために。





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