私を受け入れてくれる人がいる
わかってくれる人がいる
たくさん・・・たくさん―――
信じるもの、その先に-30-
俺はこの2週間ずっと考えてきた。
『何』から逃げとるのか・・・。
皆とテニスはしてた。
でもどこか上の空で。
他の奴らも不思議がっとったの。
「仁王君、どうしましたか?」
「のう、柳生。」
「はい?」
「あいつの残したことの答・・・出たかの?」
柳生は驚いたようにこちらを見る。
幸村が答えんかったんは知っとる。
その理由も。
だが今の俺は何か糸口が欲しかった。
何もわからんままは嫌だから。
「・・・少し話をしましょうか。」
柳生はそう言って俺らはコートから出た。
真田もその理由はわかっとるじゃろ。
何も言わんかった。
「私も完全な答は持っていません。」
「見つかりそうなんか?」
「えぇ。」
見つかりそうで見つからん・・・。
俺よりわかっとる。
その話を聞こうとは思わん。
聞いたらそれを答としてしまうじゃろうから。
「何から逃げちょるか。それがわかったらに何か出来るのかねぇ?」
「別にさんだけではないでしょう?」
「・・・あいつもか?」
「えぇ。」
・・・・わからん。
何であいつの味方になるのか。
を傷つけた責任はあいつにあるはずじゃろ。
「さんを傷つけたのは誰かわからないでしょう?」
「誰も見てないらしいのぅ。」
「ただ彼女は側にいなかっただけです。」
その隙を狙うじゃろ。
俺がするとしたらそうする。
「いつも一緒にいれるわけがありません。お二人とも仕事をきちんとしていたらしいですし。」
「・・・そういうことか。」
ペテン師と呼ばれる俺としたことが。
こんな単純なことに気付かんかったとは・・・。
俺は逃げてた。
それが何かはわからんかった。
それは・・・あいつじゃ。
から逃げとるんじゃ。
あいつを理由にして・・・あいつの責任を理由にあいつを避けてた。
「・・・すまんの、柳生。」
「いえ・・・。それでは幸村君のところへ行きますか?私も今出ましたし、心配でしょう?」
「そうじゃの。」
「それに俺たちも混ぜてくれないか?」
「柳・・・真田・・。」
俺が行こうと思ったのはのことを調べたから。
、15歳中3。
簡単なプロフィールはもちろん、経歴まで。
6歳までフランス在住。
氷帝学園幼稚舎に入学し、10歳までに氷帝レギュラーのほとんどと出会う。
中等部に入るまでは栗本咲人と一緒に住んでいたが、中等部入学直後、氷帝近くのマンションに1人で住む。
なお、両親はフランスの有名デザイナー。
中東部に入ると男子テニス部マネージャーとなり、も入ってくる。
2人共レギュラーのファンに目をつけられ、暴力を受けていた。
が私刑を受け『、私は貴様を許さない』と書かれた紙を受け取る。
それに怒りを覚え、立ち向かった。
藍川美鈴の転入により虐めを受け、現在に至る。
「ざっとこんなものだろう。」
栗本咲人との関係はわからない。
ただ、いとこではないかという説が有力だ。
・・・おかしい。
は藍川を虐めたという事はない。
だが藍川は「虐められた」と言っている。
この矛盾は何だ。
「調べてもコレはないだろうな。」
聞くしかないという事だ。
逃げている・・・。
その言葉が俺の頭を支配していた。
何からだというのだ。
俺は・・・何から逃げている?
「・・・真田副部長!」
「む、赤也か。どうした?」
「ボーっとしちゃってどうしたんスか?」
「いや、なんでもない。」
今部活中だという事を忘れていた。
すぐに考えてしまう。
何から逃げているのか・・・。
答が出てこないのがもどかしい。
「弦一郎は答を持っているのではないか?」
「どういうことだ、蓮二。」
「そういうことだ。」
突然言われた蓮二の言葉。
答を持っている・・・?
俺が・・・?
何を求めていると聞かれればこう答える。
答を求めている、と。
答が欲しい。
だが誰かから出して欲しくない。
自分で出したいのだ。
答を出すことを・・・躊躇っているのか?
「答を出すことから逃げている・・・のか。」
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