まだ私は何もわかってない

これからも、今も

だからできることを探すの





信じるもの、その先に-29-





翌朝、1通のメールが入っていた。


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Date:5/23 09:34

From:幸村精市

Title:無題
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今日、病院に来てくれないか?
俺の病室に。

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Date:5/23 09:50

To:幸村精市

Title:Re:無題
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わかった。
11時ごろに行くわ。

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きっとまだ熱は下がってない。

でも大切なことだと思う。

行かなきゃいけない、そんな気がした。


「蒼耶さん、私金井総合病院に行ってきますね。」

「俺が信用できひん、て?」

「まさか。精市のところに行くんです。」

「熱下がってへんのにか?」

「はい。」

「・・・部活に行かんて約束するならええで。そのまま家帰ってもかまへん。」

「わかりました。」

「あぁ、そや。それとちゃんからこれ。あたしのだけど大丈夫だろ、やて。」


蒼耶さんから袋を受け取る。

中は制服だった。

私はそれを着て精市のところへ向かった。

いるのは精市だけじゃないはず。

きっと・・・立海の皆がいるはず。

私が彼らに残したことの答・・・かな。


「・・・精市。」

、2週間ぶり。」

「そうね、私が立海に行ってからだからそれくらいかしら?」


正直なところ彼等に会うのは怖い。

味方になってくれるとかは思ってないけど・・・。

私を責めてきた人たち。

あの時の怒りの目が怖い。

・・・でも逃げてはダメ。


「・・・今日はあいつらに会って欲しいんだ。」

「立海のレギュラー・・・?」

「わかってたんだ。」

「何となくね。答、かしら。」

「あぁ。俺も答が出るまでは来るなと言っていたから。」

「皆いるの?」

「いや、弦一郎と蓮二と仁王と柳生だけだよ。」


半分・・・か。

一番最初に来るだろうと思ってた人たち。

あの3人もバカじゃない。

だから答は出ると思うけど・・・。

そうだ、ここで確かめなきゃ。


「精市、メールでも聞いたけれど・・・何から逃げているかって事伝えてないのよね?」

「もちろん。」

「なら・・・彼等が答えた後、精市の答を伝えてあげて。」


精市はにっこりと笑って頷いた。

そして病室の扉が開く。

入ってきた彼らの目は怒りに染まっていなかった。

驚くほどにしっかりしていた。

この前とは全く違う表情。


「・・・?」


精市に声をかけられるまで驚いていた。

でもここからは気を引き締める。

立海でのように強い私でいる。


。」

「はい?」

「すまない。」

「え・・・?」


4人同時に頭を下げた。

若の言ったことが蘇る。


『悪いと思ったら謝るのは当たり前でしょう?』


この人たちも同じなんだ。

悪いと思ったから、

自分の行いを悔やんだから・・・。

真田さんたちが頭をあげると私は微笑んだ。


「許す、許さないっていうのはわからないから言わない。でも、私を受けて入れてくれるのなら話を聞きたい。」


あなたたちは何から逃げていたの?

私は恐怖から逃げていた。

自分でも気付かないくらいに逃げていたの。

チョタに言われてやっとわかったくらいだもの。

だから眼鏡はもうかけない。


「・・・お前たちは答がでたからここに来たんだろう?だから俺はを呼んだ。」

「俺は・・・自分でもまだよくわかっとらん。」


わかってない・・・?

なら何で・・・?


「じゃけど、・・から逃げとったら何もならんと思った。だからここにおる。」

「それでいいじゃない。」

「え・・・?」

「私から逃げている。そう思ったからここにいるならそれが雅治の答じゃないの?」

「仁王は言ったよね。『何から逃げちょるんやろ?』って。その何、がなだけだ。」

「・・・そか。俺にも答が出たんか。」


雅治はふっと笑った。

答が出て安心したように。

私も笑う。

でも、まだ3人聞いてない。


「私は違います。」

「柳生・・・さん?」

「確かにからは逃げているでしょう。ですがそれだけではありません。」


それだけじゃない・・・か。

・・・あれ、彼は今私をと呼んだ?

受け入れてくれたのね・・・?


「私はのことばかりで他を考えられませんでした。」


他・・・?


を責めなければ自分が苦しかったのですよ。は大切な人ですから。」

「それで、何から逃げていたの?」

「自分から、です。正確には自分の苦しみから、でしょうか。」

「苦しんでいても、何もいいことないよ?」

「えぇ。ですが他人を巻き込むよりはマシです。」

「・・・そう。」

、何か力になれませんか?」

「俺もじゃ。」


2人とも私を受け入れて私のために動こうとしている。

それがすごく嬉しかった。

でも・・・。


「雅治、比呂士。まだ真田さんや柳さんの話を聞いてないわ。」








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