恐怖から逃げない

その証に私は眼鏡を外した

一歩進んだの





信じるもの、その先に-28-





が眠りについてからしばらくの沈黙。

その沈黙を破ったのは芥川さん。


ちゃんってしっかりしてるよね。」

「その分、損してるけどな。」


に同感。

は損しすぎ。

藍川にイジめられてるのに救おうとする。

跡部さん達を救いたい・・・ってのはまだわかるけど。

優しいことはいい。

でもは優しすぎる。


「でも、そんなを僕たちは守りたいんでしょ?」

「まぁな。」

「俺たちは何をしたらいいんだろうか。」


部長の言葉にオレたちは黙る。

何が出来るんだろう。

特にオレたち青学は。

藍川が青学でしてたことは知ってる。

自分はコートで応援して、裏仕事は他の1年にやらせてた。

そして自分は仕事をしたように振舞っていた。

藍川は何が目的だったのかわからない。

バレた時一度涙を流して否定した。


「私・・・ちゃんとしてますよ・・・っ!先輩たち、酷いです・・・・っ。」

「藍川、もう演技やめたら?」

「えん・・・ぎ・・?」

「直木たちが言ってた。仕事を押し付けてくるって。」


オレがそう言うと開き直ったように笑った。

演技だと証明するように。


「クスッ・・・何だ、バレちゃった。」


その笑いがすごく気味悪かったのを覚えてる。

気にした様子もなく何か企んでるようで見たことのない笑み。


「えぇ、そうです。したことありませんよ。出来ないことはありませんが。」

「何故しない?」

「面倒だからですよ。」

「俺たちが目当てかにゃ?」


菊丸先輩の言葉は自惚れなんかじゃない。

自分達がモテることくらい知ってる。


「まさか。確かにかっこいい人たちばかりですけど、違いますよ。」

「何が目的だった?」

「言いません。義務はあるんでしょうが、私からそれをいう事は許されません。」


それから1ヶ月位して藍川は去った。

その1ヶ月の間だけまともに仕事をして。

オレたちは藍川の目的を知ることはなかった。

乾先輩ですら。


「・・・マ、リョーマ!」


の声にハッとする。

今は思い出すときじゃない。

に何が出来るか考えるとき。

オレは首を横に2、3回振って考えを払った。


「何かしようなんて考えても出てこねぇと思いますよ、俺は。」

「桃、どういうことだ?」

「そのままの意味ですよ、大石先輩。考えてもでてこない。なら、思いついたときに行動したらいいじゃないっスか?」

「それは・・・そうだが。」

「その行動を起こしてに迷惑がかかるとしたら?」


の言葉に皆のほうを向く。

迷惑・・・か。

がそれを言うのはわかる気がする。

のために動くのに簡単な考えじゃいけない。

安易な行動じゃ何もならないって。


先輩・・・。」

「そんなことは望まないよ。何が出来るかなんて考えて無駄だ。」

ちゃんは特に俺たちに何かしてほCなんて思ってない。」


1人で解決する・・・って?


ちゃんは強い。でも誰かが側にいないと寂しいんだ。」

「1人じゃ何も出来ないってことっスか?」


芥川さんは首を横に振った。

は1人でもできる。

でも1人じゃ寂しい。

そしてオレらに何かしてほしいなんて望まない。

ってことは・・・。


「オレらはを信じて、側にいて、一緒に何か考えたらいい・・・ってこと?」

「そういうことだね。」


だから今は考えなくていい、か。

桃先輩の言ってること半分正解じゃん。


「一緒に考えて、何も出てこなかったり、迷惑をかけてしまうことは全然構わない。」


はぐっと拳を握って続けた。


「でも、を傷つけたり、哀しませるような事すればあたしが容赦なくブッ飛ばす。」

「そうだね。あとべーたちも含めて、ね。」

「・・・さ・・くと・・・。」


オレたちは一斉にを見た。

突然が喋ったから。

起きてんのかと思ったけど寝言みたい。

少し安心した。

オレは今の話、ここだけにしたいから。


「咲人・・・・?」

「英二、知ってるの?」


菊丸先輩の呟きを拾ったのは不二先輩。

菊丸先輩の口ぶりは知っていそうな感じ。


「俺の知ってる咲人かどうかはわかんにゃいけど・・・。栗本咲人だったら小学校が同じだったにゃ。そして俺の友達だった・・・。」


菊丸先輩の表情がだんだん暗くなっていく。

友達『だった』・・・?


「だった、とは?」

「半年前、交通事故で死んだにゃ・・・。」


でもでも、その咲人かはわからにゃいっ!と先輩は続けた。

先輩は信じたくなさそうだ。

亡くなった友達を知ってるなんて。

同じ哀しさを味わっている、なんて。


ちゃんがその咲人を知ってるなら・・・。」

「・・・あってる。私の知ってる咲人は栗本咲人、ただ1人よ。」

・・・!?」

「英二が話し出したくらいは意識はあったの。起きようとは思わなかったけど・・・。」


菊丸先輩がしゅんと肩を落とした。

思い出して欲しくなかった・・・?


「先輩、その人がさっき言っていたかけがえのない人ですか?」

「そんなところから聞いてたのね、チョタたちは。・・・そうよ。でも今は話せない。」


そう言っては再び目を閉じた。

いろんなことがわかって頭めちゃくちゃ。

家で整理しよ・・・・。












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