いつか話すよ

咲人のことを

だから今は待って・・・?





信じるもの、その先に-27-





「理由・・・か。には言ったものね。」

「あぁ。だからあたしはその眼鏡はいらないと思う。」

「話すのはいいけれど・・・。」

「ねぇ、不二先輩たち、出てくれば?」

「日吉と長太郎もだC。」


ジロちゃんとリョーマに言われちゃった。

いるのはわかってたんだけどなぁ・・・。

出てきたのは若とチョタ、そして青学のレギュラー陣。


「盗み聞きするつもりはなかったんだが・・・。」

「わかってる。・・・でもあなたたちも聞きたいんでしょ?」


沈黙は肯定・・・でいいのかしら、この場合は。

私はリョーマから眼鏡をもらってからゆっくりとしゃべる。


「私は弱い。」

「・・・、まだ言うのか?」

「うん、弱いから。特にこれをかけているときは。」

「だが、立海の奴らや青学ではとっただろう?」

「・・・がいたからね。」


今、眼鏡をかけていない。

前ほどじゃないけれど・・・怖い。

皆、強い人だから。


「私がこれをかけるのは遮る何かが欲しかったから。」

「何を遮りたいのかにゃ?」

「目・・・強い、しっかりとした瞳を直接見ないため。そして、世界と自分を遮るため。」


レンズ越しに見たかったの。

直接見たくないから。


「・・・本当には弱いの?」

「同じことを言うのね、リョーマ。」


そう、も以前同じことを言った。

やっぱり姉弟だね。

私は眼鏡をかける。


「こうしてると安心するの。強い瞳を直接見ないでいいから。」

「一度取れば大丈夫だ・・・って言ったのはだろ。」


はそう言って私の眼鏡を取った。


「・・・そうね。でも学校では絶対とらない・・・とれないの。」

「何でですか?」

「怖いの。侑士や景吾たちの目を見るのが。」


前まであんな温かい目で見てくれたのに。

今は酷く冷たい目。

一番近くで見られたはずの表情がとても怖いの。


「先輩はそうやって逃げてたんですか?」


え・・・?

チョタの一言に思わずチョタを見た。

逃げる・・・?

今までずっと向き合ってたつもりなのに・・・。


「今の先輩は逃げているでしょう?自分から・・・というよりも恐怖から。」

、恐怖から逃げてたら何も出来ないよ?」

「なぁ、。あたし言ったよな。壁作って弱いって言って楽しいか?って。は強い。」

「私は・・・。」

「それはなし。は強い。」


怖いのに・・・?

恐怖の対象があるのに・・・。


「大丈夫。ちゃんは強いよ。だから逃げないで?」


ぎゅっとジロちゃんに抱きしめられた。

それがとてもとても温かくて・・・。

思わず涙が零れた。


「怖いの・・・。皆に突き放されたから・・・!ずっと・・・ずっと一緒だったのに・・・!」

ちゃん、そうやって涙を流していいんだよ。恐怖から真っ向に向き合わなくてもいい。でも忍足たちから逃げないで。」

「逃げてたら何も出来ない。それをは立海の奴らに言ったろ?」


精市が何を言ったのかは知れない。

でも私は確かに言ったんだ。


『私も逃げます、あなた方も逃げています。』


って。

逃げてたら何も出来ない。

わかっていたのに・・私も逃げていたんだ。


、恐怖から逃げるな、なんて言わない。でも・・・できるよね?」

「周助・・・。」


何を、とは言わない。

でも・・・わかるよ。

恐怖から逃げるかもしれないけど。

侑士や景吾たちからは逃げない。


「・・・ジロちゃん。」

「何?」

「これ、預かっていて。」


私は眼鏡を渡した。


「いいの?」

「逃げない。そう決めたから。だから・・・皆を救うまで預かっておいて?」

「絶対受け取りに来てね。」

「絶対、ね。」


咲人に渡してもいいんだけど。

私のことを最初に信じてくれたジロちゃんに渡す。

咲人のところだといつでも受け取りにいけるから。

弱音吐いたときに取っちゃいそうだから。


「わかったC。」


ジロちゃんは大切そうに両手で持った。

また一歩進んだね。

少し、強くなれた。


「・・・少し、眠ってもいい?」

「あぁ。だが暫くここにいると思う。五月蝿いかもしれないぞ?」

「いいよ、国光。私は構わないから。」

「大丈夫ですか、先輩。」

「ただの風邪だから。まぁ・・・39度あるらしいけど。」

「・・・大人しくしててください!」

「だから眠りたいんだけど。」

「あ・・・すみません。」

「クスッ、いいよ。」


私はポスンと倒れた。

その上に若が布団をかけてくれる。


「ありがとう、若。」

「早くよくなってください。藍川のドリンクなんて飲みたくないですから。」


若の言葉にくすくすと笑って頷いた。


「もちろん。私は支える立場の人間だから。」

「おやすみなさい。」

「おやすみ。」


私は目を閉じる。

熱と薬の効果もあってすぐに深い眠りについた。







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