さぁ 進もう

一歩前に

立ち止まってもいいから





信じるもの、その先に-20-





「貞治。」

「何だ?」

「美鈴に言ったでしょう?『に暴力を受けている』と。」

「信用性0.02%、あまりあてにならないな、と続いたが。」

「・・・そう。」


美鈴はそれを信じた・・・か。

いや、これは違う。

嘘と知っていて私をはめるために隠したんだ。

意図的に。


「奴にはめられたな。」

「そうね・・・。」


でも教えたのは何故?

その疑問はすぐに解けた。


「最後のためしだ。藍川がどうするか。そしてこれからを。」

「・・・!」


思わず目を見開いた。

この人が・・・・。

試された・・・!

怒りがわいた。


「殴りたいなら殴ればいい。」


拳をバッと振り上げる。

それをそのままおろした。

だけどそれの勢いはない。

ポンと胸にあてただけ。


「怒ってないのか?」

「・・・怒ってる。でも・・・これじゃ岳人たちと同じだから。」


怒りで人を殴り、傷つける。

それは侑士たちと同じ。

私はそんなのイヤ。

怒りで人を殴って傷つけることだけは・・・。

『誰か』を守る為じゃなくて『自分』を守る為に殴るのは・・・・。


「・・・優しいな。」

「え?」

「いや、なんでもない。」


国光は・・・何が言いたかったのかしら。





「優しいな。」


そういった手塚の表情はどことなく柔らかかった。

あたしは「そうだな。」といいかけてやめた。

ただふっと笑うだけ。


、何笑ってんの?」

「別に・・・。でもリョーマたちが受け入れてくれてよかった。」

「何で?僕たちは受け入れないとでも思ったの?」


不二の言葉にあたしは首を横に振った。


「あんた達がバカじゃねぇことは知ってる。」


だから不安だった。

受け入れて・・・・。

知っていてなお今の立場と違う立場を選ぶんじゃねぇかって。


「わかっていて傍観者になるんじゃないかと思った。」

「俺たちが藍川を知っているから・・・かにゃ?」

「あぁ。だからそうとるんじゃねぇか・・・って思った。」


一番とりそうなのは乾。

だけど全員がの味方。

を支えてくれる人。


「・・・蓮二たちは傍観しそうだな。」

「あいつらは・・・さっき会って来た。」


そしては言った。


「今のあなた方は何を言っても全て否定するでしょう。」

「・・・?」

はわかってんだ。今のあいつらを・・・。」

「だって・・・彼等はチョタと同じだもの。」


は当たり前のように答えた。

鳳と・・・・?


「チョタは今迷ってるの。答はきっとないでしょうね・・・・。彼等も同じ。迷ってるの。」

「そうは見えなかったが・・・?」

のことで混乱してるのよ・・・きっと。だからヒントをあげた。」


・・・!

だから認めたのか。

逃げていると。


「幸村は何を話したかわかるか?」

「さぁ・・・?でも信じてる。迷っている彼らを導いてくれると。」

「何のことだ?」

「立海の人たちに会ったの。さっきが言ったように。」


は穏やかに話した。

さっきのことを。

正確に、そして客観的に。

あたしは時折補足する。


「・・・で?はどう思ってんの?」

「リョーマ、は年上だ。」

「いいよ、別に気にしない。・・・どう思ってるって?」

「立海の人たちのことを。」

「迷ってる人たち・・・かしら。」

「違う。オレはそう聞いてるんじゃない。」


が立海をどう見ているか・・・・じゃない。

リョーマは許すとか怒るとか・・・そういうの感情を聞いている。

あたしは許せない。

事実を知らない奴が自分を正しいって決めている。

事実を知ろうとしない。


「事実を知らないだけ。・・・・でもだからこそ迷っているのでしょう?怒るのでしょう?」


は困ったような笑みを浮かべる。


「チョタにも言ったことだけど・・・・今は信じる道を歩みなさい。それが真実じゃないとしても。」

「真・・実・・・?」

「うん。それを言えばよかったな・・・・って思う。」

「・・・お人好し。」


は許すとかそういう考えじゃない。

初めから許していたんだ。

何をしても、何を言われても許そうと。

迷っている奴等だから。

だから自分のことを後悔している。


「ホント、お人好し。」

「知ってる。」

「バカ。」

「うん。」

「だけど・・・・あんたらしいや。」


あたしもまだまだだね。





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