黙るだけしかできない
何もいえない
見つめるしかできない
信じるもの、その先に-18-
「だけどを責めるのは間違ってるんじゃないの?」
仁王の声を聞いて口を挟む。
みんなの言うこともわかる。
は俺たちの大切な人だから。
「精・・・・市・・・!?」
「ごめんね、遅くなって。」
本当は全て聞いていた。
口を挟まなかったのは見てみたかったから。
皆が受け入れるかどうかを。
そして、あれから少し強くなっているを。
「幸村は知っているのか?」
「もちろん。は俺の入院しているところにいるからね。」
「こいつのこともか?」
「あぁ。」
だから言える。
を責めるのは間違っている、と。
は自分を責めている。
自分の責任だ、と。
それをわかっていて仁王たちに言っている。
強さを見せている。
それは決して強がりじゃない。
本来の強さ。
「俺も越前もだまされていない。から聞いて自分で選んだ。藍川さんから聞いても側だっただろうね。」
「あー?そだな。あたしはがしたとは思ってなかった。つかあいつを信用してなかった。」
「それがだまされてるって言うんスよ。」
「・・いい加減にしろよ。」
「・・・!」
は一瞬だけ哀しい表情をしてた。
病院での俺みたいに。
だけどその後の表情は俺と違う。
強くて先を見据えた表情。
「もういいの。青学へ行こう?」
「だけどさ・・こいつらムカつく・・!」
「今のあなた方には何を言っても全て否定するでしょう。」
最初は越前に優しく、
次は仁王たちに語りかけるように告げた。
俺はの次の言葉を待つ。
「だから私は去ります。精市の話を聞いて考えてください。」
「逃げるのか?」
「えぇ、そうですね。私も逃げます、あなた方も逃げています。」
「あんた・・・!」
「それでは失礼します。」
パタンと部室の扉が閉じる。
残された俺たち。
「・・・俺たちは何から逃げちょるんやろ?」
きっと・・・現実を受け止めること。
そして辛さ。
俺たちはそれから逃げている。
はケガをした。
はそれで自分を責めている。
それを知らない。
知ろうとしない。
事実を知らない。
だから逃げている。
「それを言ってどうする?」
「どうする・・・とは?」
「自分で気付かなきゃ意味がない。何から逃げてる・・・なんて自分で気付かなきゃ。」
『何』かは人それぞれ。
俺の答えは『辛さ』と『現実を受け止める』こと。
仁王たちは自分で答えを出さなきゃいけない。
「幸村君は何だと思っているのですか?」
「それを言ったらお前たちはそれを答えとするだろう。だから言わない。」
俺は俺の答えを出す。
そして自分の道を行く。
「俺は見つけている。だから俺は俺の道を行く。」
すっと立ち上がる。
俺ももう戻らなくちゃいけない。
最後にこの言葉を残して。
「答えが出たら病院に来てくれないか。それまではこないでほしい。」
皆が次来るのはいつだろうか。
そんなことを考えながら病院へ戻る。
、俺もやるだけのことはしたよ。
でも皆が受け入れてくれるかはわからない。
俺は受け入れてほしいと思う。
は優しいからいらないって言うかな・・・・。
でも同情じゃない。
を支えてくれる人を探してるんだ。
俺が支えてあげたい。
でも俺じゃ力がないんだ。
を支える力が。
だから少しでも人数を多くしたい。
を支える人を。
「大丈夫だよ、。」
俺もいる、
芥川もいる、
越前もいる。
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