また1人

支えてくれる人がいる

優しい人がいる





信じるもの、その先に-15-





「立海と青学に?」

「あぁ、この書類を届けてくれないか?」

「承知しました。部活はどう致しましょう?」

「休んでもらってかまわない。」

「はい。それでは失礼します。」


榊監督に呼ばれたのは朝。

2校に行くのは昼から。

私は今、部室にいる。

時間は授業中。

こうしているのはドリンクを作っているから。

私が部活にいない。

つまりドリンクを作る人がいない。

だから今、作っておく。

注ぐことくらいはするでしょう、美鈴は。


「・・・タオルもOK、と。」

「何してんの、。」

・・・!何でいるの・・・?」

「バーカ。学校にいて授業に出てねぇ、そんでジローといねぇっつーことはここしかねぇだろ。」

「・・・今日ね立海と青学に行くの。だからドリンクを。」

「あいつ任せりゃいいのに。」

「美鈴はできないもの、こんなこと。それが私に返ってくるのはイヤだから。」


は美鈴の名前を言わない。

気持ちはわかるけど。


「・・・座れば?」


私がさしたのは私がいつも使っているソファ。

はそこに腰かけた。


「行くのは放課後?」

「ううん、昼から。」

「あたしも行く。」

「何で?」

「あんたを守る為、ジローのかわり。」

「・・・!」


はこんなに気を遣ってくれる。

わかってるんだ。

私が怖がっていることを。

立海には精市がいる。

だけどが関係しているところ。

責められるのは当たり前のこと。

私のせいだから。

青学に知り合いはいない。

だけど美鈴がいた場所。

確実に責められる。

皆に。


「つーか、榊先生は何でに届けようとしてるわけ?あいつでいーじゃん。」

「美鈴は1年だから。」

「は?あいつ1年なの?」

「知らなかったの?」

「・・・ふざけんな。先輩をいじめんじゃねーよっ!」


はソファの背もたれを思っきり殴った。

完全にキレている。

私はすっと立ち上がってのこぶしを両手で包んだ。


・・・!」

、聞いて?」

「・・・・。」

「私も美鈴も望んで先輩後輩になったわけじゃない。そして私がイジめられるのは私が弱いから。」

「だけどっ!」

「仕方ないの。それが美鈴の性格で私の性格だから。」


解決しなきゃいけないのは私と美鈴。

私が最初にきっぱりと拒否することもできた。

美鈴の演技だ、と。

それができなかったのは私が弱いから。

私の弱さのせいなの。


「・・・あんた、本当にバカ。」

「・・・知ってる。自分でもそう思うもん。」


普通は美鈴を恨む。

かばったりなんかしない。

私が美鈴をかばうのは・・・・。

救いたいから。

テニス部を。


「あたしもバカ。」

「・・・納得してるから?」

「あぁ。」


は拳をひっこめた。

私は立ち上がり、再びドリンクを作り始める。


「やることあるか?」

「大丈夫。あと少しで終わるから待ってて。」

「んー。」


10分くらいでドリンクは作り終えた。

冷蔵庫に入れてそれにメモをはりつける。

"各自のボトルにこれから注いでね。私は今日、いけないから。"

ボトルは洗って干してある。

このメモを皆は見ない。

普段はこの冷蔵庫を遣わないから。

それにジロちゃんにこうメールを送っておく。

『冷蔵庫を美鈴以外があけないように見ておいてね』

と。


「終わり、と。」

「早いが、行くか?丁度休み時間だし。」

「・・・そだね。」

「じゃ正門前で待っといて。鞄とってくる。」

「はーい。」


私達はこれから立海へ向かう。







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