私を覚えていない
もういない咲人
私を突き放した皆
信じるもの、その先に-14-
部活に出なかった次の日。
クラスの目は一段と冷たかった。
「藍川に仕事押し付けてんの?」
上から降ってきた言葉。
厳しい言葉。
だけど優しい口調。
いつもなら無視するのに私は思わず顔をあげた。
「あなたはそう思うの?」
「どっちでもいい。事実を聞きたいだけ。」
「何故?」
「がそんなことするとは思わない。」
「そう・・・。」
言葉はそっけない。
でも彼女は優しい。
そう思った。
私は立ち上がって歩き出す。
目指すのは屋上。
「どこに行く?」
「屋上。全部話すわ。」
いつからこんなにうごくようになったんだろう。
ジロちゃんが側にいるときから・・・かな。
屋上には先客がいた。
それはやはりというかなんというか・・・・ジロちゃんだった。
「ジロー・・・?」
「んーあれー・・・ー?」
「知り合い?」
「うん・・・まーねー・・。」
ジロちゃんは眠そうに目をこすりながらもこちらを見る。
その目は不思議そうな目。
「なんでいんのー?」
「あたしがいちゃダメか?」
「大丈夫だよ、ジロちゃん。」
ジロちゃんの側に座る。
最初に口を開いたのは彼女。
「・・・で。結局はどーなの?」
「してないわ。きちんと仕事はしてる。美鈴もね。」
「えー?藍川が?」
「本人がそう言ってるの。」
美鈴の言う仕事。
それは部員に癒しを与えること。
私とは違う考え。
ひとつひとつ話した。
彼女に、
ジロちゃんに。
今日までのことを。
そして、のことも。
「そ。やっぱ藍川仕事してないじゃん。」
「同感だC。」
「それではどう思うの?」
「別に・・・。皆を救いたいだけだから。」
「自分を犠牲にしても?」
こっくりうなずく。
するとため息がひとつ。
「あんた、バカ。」
彼女はにっと笑った。
「だけど、守ってやらなきゃな。」
「え・・・?」
「あんた、独りだろ?」
ジロちゃんと同じ。
彼女もそう思ったんだ・・・。
「私が自分のことを不利にして言ってるとか考えないの?」
「そうだったらジローが言ってる。」
「ならそういうと思った。」
ジロちゃんもにぱっと笑った。
彼女もジロちゃんも優しいね。
そして・・・強い人。
「ありがとう、えっと・・・。」
「。越前。」
「ありがとう、。」
「どういたしまして。」
また1人、支えてくれる人ができた。
越前。
信じてもいい人。
私はまた一歩進める。
きっと。
「そういえば。入んないのー?マネ。」
「するわけないだろ。」
「なんでー?」
「めんどくさい。それに・・・。」
「それに?」
「リョーマに会いたくない。テニスで。」
「弟だっけ?」
「そ。比べられたくねぇ。」
「弟いるの?」
「青学1年。超生意気。」
思わずクスリと笑う。
今の屋上の空気はさっきとは違う。
とても明るくて・・・・楽しい。
それを見ている人がいるとはわからなかった。
気付かなかった。
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