全てを話そう
それは彼だから
優しい彼だから――――
信じるもの、その先に-13-
「そうか・・・。辛いんだね。」
「・・・。」
「別に同情してるわけじゃない。そんなのは望んでないだろ?」
「幸村・・・さん?」
「精市でいいよ。」
「同情・・・いらない・・・でも・・。」
「でも?」
「支えてくれる何かが・・・・欲しいって思ってしまう。」
それは私が弱いから。
支えてもらわなきゃすぐに崩れるの。
そんな私は・・・ダメですか?
「大丈夫。芥川も俺もいる。」
いつのまにか優しく抱きしめられていた。
この人・・・は味方?
私を分かってくれるの?
私が自分の味方になって欲しいからって嘘ついてるかもしれないのに?
有利に喋ってるかもしれないのに?
「だから、辛いときは泣いていいよ。1人で抱え込んだりしないで。」
「・・・せー・・いちぃ・・・・っ!」
さっき泣いたばかりなのに。
まだ涙が出てくる。
止まることをしらない。
「大丈夫。今は誰もいない。俺だけだよ。」
「・・・うぅっ・・・。」
私が落ち着くまでどれくらいかかっただろう。
わからないけれど精市はずっと抱きしめてくれた。
優しく、強く。
「・・・落ち着いた?」
「うん・・・ありがとう。」
「俺の部屋、来る?」
「え・・・?」
「俺もここに入院してるんだ。来るかい?」
私は首を横に振った。
「今はいい。のところに戻らなきゃ・・・。」
「そう。じゃぁ俺も行こうかな。」
「・・・いいよ。一緒に行こっか。」
弱々しいけど笑った。
精市はそれをどうとったどろう・・・?
強がってる?
無理してる?
感謝?
謝罪?
違うよ。
私は聞いてくれたのが精市だからだよ。
精市だから笑ったの。
それだけ。
「。」
病室に入った精市の一言。
は心底驚いた表情をしている。
そっか・・・。
精市も覚えているんだね。
私だけ・・・か。
少し期待したのにな。
私だけじゃないかもって。
いけないこと・・・だけど。
「は精市を知ってるの?」
「んー?さっき知り合った。屋上で。」
「屋上行ってたの?」
「少し考え事したくて。」
「ふぅん・・・。」
「、のこと知らないの?」
「精市!?」
精市の行ってることは私が一番聞きたいこと。
だけど一番聞きたくないこと。
答えが怖いから。
返ってきたの答え。
「知らないよ?私が目を覚ましたらいた人。男テニのマネって言ってたから・・・・新しい人かな?」
それは私が一番恐れていたもの。
の口から再び出る記憶喪失だという事実。
「そう。」
「・・・?どうしたの?」
「いや、何でもない。」
精市が哀しい表情をしたのを私は見逃さなかった。
何で精市が哀しむの?
同情してるの?
同情はいらないの。
「私、帰るね。」
「あ、うん。」
「じゃぁ俺も帰ろうかな。」
「また来るね、。」
パタンと扉の音が響く。
いやなくらい。
「何で精市が哀しいの?」
「え・・・?」
「同情してるの?私に?」
自然と口調が厳しくなる。l
「・・・。」
「そんなものは、いらない。」
一度精市を見てから歩き出す。
カツカツとローファーの音が響いた。
それは私の心に哀しみをつくる。
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