授業が終わってから向かう場所

それは部室ではない

大切な人がいるところ





信じるもの、その先に-12-





金井総合病院。

が入院している病院の名。

私はまだそこに行ったことがない。

病室の場所もわかっている。

私はそこに入った。


・・・・。」


個室にいる

目を閉じている。

眠っているのかな・・・。


「幸せそうね、彼女。」


入り口でそう言った看護婦さん。

優しく微笑んでいる。


「幸せ・・・?」

「何かの苦痛から抜けたように幸せに眠っているわ。」

「・・・学校では酷かったから。私も、も。」


きっとはもうイジめられない。

私に的が集中するだろうから。

それでいい。

関係のないを巻込んだんだから。

がこうして幸せそうな顔をしてくれるのならいい。

私に笑顔を見せてくれるなら。


「んっ・・・誰か・・いるの・・・?」

っ!」


パッと笑って後ろを向く。


「起きたのね。調子はどう?」

「少しだけ・・・頭痛がします・・・・誰・・・?」


はこちらを向いて眉を寄せる。

覚えて・・・な・・い?

記憶・・・喪失・・・?


・・・・。」

「あたしを・・・・知ってる人・・・?跡部たちの知り合い?」


景吾たちを覚えている。

私だけ・・・?

私だけ忘れられた・・・?


「私・・・私は。男子テニス部マネージャーよ。」


泣かないように笑う。

忘れられたのは哀しい。

私だけ忘れられたのはイヤ。

だけど・・・もうに辛い思いをさせたくない。

だから涙は流せない。

流しちゃいけない。


・・・さん・・。」

でいいわ。よろしくね?」

「・・・よろしく。」


それから少し話した。

性格は前とかわらない。

明るくて気配りのできる人。

ただ違うのは・・・

私を覚えてないという事。

それがすごく辛かった。


「ごめん、少し外に出てくるね。」


部屋から出ると屋上へと走る。

涙が止まらない。

空は青。

私の悲しみをとってくれるような青。

だけどとってはくれない。


・・・・っ!何で・・・・っ!?」


大切な人。

がいたから乗り越えたのに。

がいたから咲人との約束も守れたのに。


「うっ・・・ひっく・・・。」

さん・・・?」


声をかけられて振り向けば。

そこにいたのは綺麗な顔立ちの人。


「立海の・・・・幸村さん・・・?」

「どうしたの?泣いて?」


優しさが身にしみた。

余計涙が止まらない。


「うぅっ・・・・!あっ・・!」


何も知らない、何も分からない幸村さん。

なのに私は彼の傍で大声で泣いた。


・・・!」

「・・・?・・・って?」

「知・・・てる・・の?」


幸村さんを見上げる。

は彼"も"覚えているのだろう。


「彼女は小等部、立海だったんだよ。」

「そ・・・なんだ・・・。」

「氷帝で何があったの?」


言っていいのかな・・・。

巻込んでいいの・・・?

・・・違う。

私が決めることじゃない。

本人が決めること。


「幸村さんは・・いいの?」

「何が?」

「巻込まれてもいいの?テニス部の人が大きく関わってるよ・・・?」


幸村さんは黙り込んだ。

だけどにっこりと微笑んでうなずいた。

とてもとても優しい笑み。


「あぁ。泣いてる人をほうっておけない。」

「・・・わかった。」


私は全てを話した。

のことも、

私のことも、

テニス部のことも・・・・。







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