私は弱いの

強がらなきゃ辛いの

辛いのは嫌なの





信じるもの、その先に-11-





「っう・・・・くっ・・・ひっく・・・・うっ・・・。」


部室で1人涙を流す。

チョタにはすごく強がっていた。

弱い自分を見せたくなかったから。

だけど・・・強がらなかったほうがよかったのかもしれない。

自分の信じる道を行く?

今、こんなにも揺れている私が言えることじゃない。

私は・・・信じる道、行けるのかな。

行かなきゃいけないのはわかってるのに・・・。

弱すぎる・・・。


ガチャ


「何泣いてるんですかぁ。洗濯し終わったタオルは?」


入ってきてそう言ったのは美鈴。

マズイところを見られた。

このこの前では絶対に弱いところを見せない。

強がっておかなきゃこの子は救えない。


「タオルはまだよ。あなたが呼び出してから忙しかったんだから。」

「さっさとしてくださいよ。」


ドカッとソファに座る美鈴。

逆に私はその場を離れた。

美鈴の言葉に従うわけでもない。

ただ、仕事をしなければ皆が困る。

その困る人が私を傷つける人であってもしなければいけない。

それがマネージャー。

私は部室の端に立って聞いた。


「美鈴、仕事しないの?」

「手が荒れるのはイヤですから。」

「青学でもマネージャーしてたんじゃないの?」

「えぇ、同じ学年の子にしてもらってました。さすがにイジメはしてませんけど。」


クスリと美鈴が笑う。


「・・・美鈴、マネージャーの仕事は何?」

「何をいまさら。マネージャーの仕事は選手をサポートすることでしょう?」


美鈴はさらっと答える。

わかってはいるのね・・・。


「なら、美鈴はサポートしている?」

「えぇ。笑顔でドリンクやタオルを渡す。十分なサポートですよ。精神的な、ね。」


つまりは癒しを与える、と。


「じゃぁ、イジメはその癒しかしら?」

「それは先輩たちが勝手に首を突っ込んでいることでしょう。関係ないことです。」


かっと怒りがわいた。

気づいたとき、手を振り上げていた私。

すぐに冷静になってその手を下ろす。


「殴らないんですか?」

「あなた・・・少し考えたほうが良いかもね、いろいろと。」


ピー


洗濯機の音と私の呟きが重なった。

だからその声が美鈴に届くはずがない。

タオルを取り出して部室を出た。

干すのはコート脇。

イヤでも皆に見られる場所。


「・・・干す場所かえようかしら。」

「美鈴に仕事押し付けられるようにできるから、か?」

「侑・・・・士・・・・。」


帰ってくるはずのない返事。

侑士は私を睨むように立っていた。


「答えろや。そうなんやろ?」

「違う・・・。」


侑士の目は恐ろしく冷たい。

だけど、それに負けちゃダメ。

美鈴といるような強がっている自分でいればいい。

一度深呼吸をして侑士を見る。


「美鈴に仕事を押し付けなんかしない。私は今までちゃんとしてきたでしょ?」

に押し付けたんやろ。」

「スポーツドリンクの味がかわってる?」


私とで改良したスポーツドリンク。

分量も、粉の割合も私たちで決めたもの。

まだ美鈴には教えていない。


「かわっとらんな。美鈴に教えたんやろ?かわるはずがないわ。」

に押し付けてたとしたら私が知ってるはずがないでしょう?」


パシッと音をたててタオルを干す。


「何やそれ。まるでみすずが仕事をしてへんみたいやん。」

「本人は仕事をしている、と言っているわ。」


ほら、とコートを指す。

そこにいるのは笑顔でドリンクとタオルを渡している美鈴。

あれが美鈴の言う『仕事』。

私が考えている『仕事』ではない。

ドリンクやタオルを渡すだけが『仕事』じゃない。

イジメに巻き込むことだけが『仕事』じゃない。


「戻れば?美鈴が探してるわよ。」


キョロキョロと探している美鈴。

その行動もきっと計算してのこと。


「そやな。」


バキッ


「っつ・・・・!」

「美鈴はそれ以上に苦しんでるんや。それくらい苦やないやろ。」


侑士に頬を殴られた。

今まで女子には何度も殴られた。

でもそれ以上に痛い。

一番近くにいた人に殴られたことが。

一番冷たい目で殴られたことが。


「痛い・・・。」


頬が。

心が。

私は部活が終了するまでそこに座り込んでいることしかできなかった。














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