盲目的な彼ら。
そんな彼らを救うために
何をしたらいい?
信じるもの、その先に-8-
傷を隠して学校へ行く。
痛いのは体だけ。
心はもう痛みを感じられない。
「先輩、来てくれます?」
部室前ですれ違ったときに言われてついていく。
美鈴に連れて行かれた場所は部室裏。
皆は部活中。
きっと何もしてなくても私のせいになるんだろう。
美鈴のことしか信じないから。
「何?」
「・・・いつ辞めてくれます?」
「部活?辞めないわ。盲目的な彼らを救いたいから。」
「何があっても、ですか?」
「えぇ。怖いけれど、諦めないわ。」
意志を込めた言葉。
これは譲れない。
皆と和解したくないわけじゃない。
だけど和解できなくてもいい。
盲目的な皆を救いたい。
それが一番の願い。
「そうですか・・・。」
ドスッ
「っあ・・・!」
お腹に衝撃が走る。
鈍い痛み。
だけどこの痛みは・・女の力だけじゃない。
ポトリ
美鈴は『それ』を落とした。
メリケン・・・・サック。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
叫んだのは美鈴。
そういう事・・・か。
私が倒れてるところを見つけた後輩を装う。
考えたこと。
自分に被害はないもの。
「美鈴!?」
「どうした?」
「先輩・・・!大丈夫ですか・・・!?」
美鈴は目尻に涙を浮かべている。
どれも演技。
私のいう事は皆に伝わらない。
「大丈夫よ・・・。」
激痛が走る。
結構食い込んだみたい。
「何があったんですか?」
「私が・・・ここを通ったら先輩・・・倒れてました・・・。」
真っ赤な嘘。
だけどそんな言葉を鵜呑みにする彼ら。
私は口出しができない。
「先輩、保健室行きましょう・・・!」
「大丈夫だから・・・・練習再開して。」
睨むように美鈴を見る。
「優しいなぁ。でも美鈴、こんな奴に近づいたら汚れんで。」
「そんな・・・先輩は汚くなんかないですよ・・・。」
「ケガすんで?」
「・・・!」
美鈴は怯えるように目を見開いた。
だんだん見ていて悲しくなってきた。
美鈴の演技に。
それを表情に出さないようにして言った。
「・・・行って。」
「あぁ。」
帰ってきたのは景吾の返事だけ。
足音だけが辺りを包む。
やっぱり悲しいな・・・・。
改めて突き放されたって思う。
「ちゃん、大丈夫じゃなさそうだよ。」
「え・・・?」
誰もいないと思っていたらジロちゃんが残っていた。
そうだ・・・。
ジロちゃんは『守る』って言ってくれたんだっけ。
「藍川にやられたんでしょ?」
「えぇ・・・メリケンサックを使ってね。」
さらりと答える。
わかってるの。
ジロちゃんが本当に心配してくれてるって。
だから躊躇わずに答える。
「辛い?」
「そうね・・・。悲しいって言ったほうが正しいかも。」
「哀しい、じゃないの?」
「えぇ。そこまで情を入れるほどじゃないの。」
ジロちゃんの言葉が心に刺さる。
今、私が悲しいのは美鈴の演技。
今、私が哀しいのは自分の無力さ。
「行こーか。」
「ドコに?蒼耶さんのとこは行かないよ?」
「んー?部室。手当てしよ。」
「・・・・ん。」
私は痛みで起き上がれない。
それを感じたのかジロちゃんは私を抱き上げた。
今はその身を任せることしかできない。
「ジロちゃん。」
「んー?」
「私、何もしてないよね・・・?美鈴に、皆に。」
「うん。」
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