わからない

何故?

何故私を助けるの?





信じるもの、その先に-7-





目が覚めたとき、そばにいたのはジロちゃん。

何で・・・・いるの・・・?

ここは・・・?

・・・あぁ。

ジロちゃんがこの病院まで運んでくれたんだ。


「起きたー?」

「ジロちゃん・・・・ありがとう。」

「それ聞き飽きたC。」

「え・・・?」

「ずっと言ってたんだよ?」

「・・・・そっか・・・・。」


ありがとうっていくら言っても足りない。

ジロちゃんが来てくれて嬉しかったから。


「ねぇ、ちゃんはさっき何言おうとしたの?」

「んー?」

「倒れる前のこと。」


・・・・それはとても気になっていたこと。

そして聞かなければいけないこと。


「何で私の味方につくの?さっき・・・・私を助けたのは何で?」


少し冷たくて、でも何かに縋るような声だった。


「何でだろうね・・・。」

「わからない・・・?」

「うん。でも助けなきゃいけないと思った。一人のちゃんを。」

「一人の・・私・・・?」

「そう、ちゃんは一人・・・独りなの前までは俺や跡部たちがいた。だけど突き放されて一人になった。」


確かに私は独り。

信じていた皆に突き放された。

美鈴の一言との事で。

偶然が重なりすぎた。

ううん・・・・これも必然なのかな・・・。


「怖かったの・・・・。今ジロちゃんを突き放さなきゃ・・・・。また突き放されることが怖かったの・・・。」


危険な目にあってほしくないなんて綺麗事。

今になってわかる。

それは自分のエゴだった、と。

怖がっていただけ。


「だからだよ。だから俺はちゃんを助けようと思ったの。怖がることはないよ。俺は『真実』を知っているから。突き放さないC。」


『突き放さない』、この言葉が心の奥に染み込んだ。

温かかった。

涙が溢れかえってくる。


「・・・・ごめ・・なさっ・・・!」

「何が?」

「私・・・ジロちゃ・・・傷つけ・・・た・・・!私のエゴでっ・・・ジロちゃん・・・傷つけた・・!」


ふわりと何かに包まれた。

それはジロちゃんに優しく抱きしめられているから。


「大丈夫。俺よりもちゃんの方が傷ついてるんだから。」

「・・・でも・・・!」

「それに、俺が聞きたいのはそんな言葉じゃないいC。」

「・・・え・・・?」


ジロちゃんは笑っていた。

どの言葉を伝えればいい?

ありがとう・・・?

信じる・・・?

わからない・・。

言葉が見つからない・・・。

だったら・・・。


「信じて・・・いい・・・?」

「うん。絶対、だから。絶対に突き放さないから。」

「・・・ありがとう・・・ジロちゃん・・。」

「どういたしまして。」

二人でにっこりと笑った。



コンコン



「はい?」


入ってきた人は白衣を着ていた。

だから自然と医者だと思った。

だけど・・・誰かに似ている。


「目、覚めたんやね。」

「あなたは・・・?」

「忍足蒼耶(おしたりそうや)。侑士の兄や。」


『忍足侑士』の言葉に体が反応する。

それは侑士に最初に突き放されたから。

頭では違う人だってわかるのに・・・・。

体が反応する。


「大丈夫や、侑士はおらん。侑士にも伝えへん。」


その関西弁がイヤなの・・・。

侑士を思い出して。

蒼耶さんと侑士が重なって見えるの。


ちゃん、蒼耶さんは全部知ってる。忍足とは全然違う人だよ。」

「違う・・・?侑士とは違う・・?」

「あぁ。あいつは大バカや。藍川のことを頭から信じ込んどる。」

「・・・・盲目的なんです、皆・・・。」


美鈴の一言を頭から信じ込む。

涙を流した美鈴の言葉を。

それが誰かの考えていたことのように。


「変えられたらいいのに・・・・。」

ちゃんは優しいなぁ。でもな・・・。」

「え・・・?」

「でもな、先に自分の傷を治しや。いろいろと化膿しとるんやから。」

「・・・はい。」

「ほな、今日はここに泊まっていき。」

「・・・はい。」





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