望んでいたようで

望んでない

見慣れた姿がここに





信じるもの、その先に-6-





「やっぱ俺、ちゃんと一緒にいた方がEみたい。」

「・・・芥川君・・・!」

「ジ・・ロ・・・ちゃん・・・?」


ジロちゃんが女子の手を掴んでいた。

何で・・・?

何でジロちゃんがいるの・・・?

突き放したのに・・・。


「何してたの?」

「・・・行こ。」

「俺の話は終わってないよ。それに答えてないC。」

「・・・ジロ・・ちゃん?」


いつものジロちゃんじゃなかった。

無邪気で明るいジロちゃんじゃない。


「・・・。」

「沈黙?君達、そんな風に逃げるんだ。現実から。」


冷たい言葉が響く。

何故怒ってるのかを考えると余計に冷たく感じてしまう。

私のために怒っても何もないのに。

あるとすれば『デメリット』だけ。


「・・・今は・・・・逃・・げて・・もい・・い。すこ・・・しずつ・・・向き合おう・・・よ・・」


私の口から出た言葉。

それはさっきジロちゃんが言ったこと。

私自身驚いた。

何故そんな言葉が今出てきたのかわからない。

だけど・・・今ジロちゃんが言った言葉と矛盾していて。

私は言葉を続けた。


「さっき・・・ジロちゃ・・・言ったよ・・ね・・・彼女たち・・・ま・・だ・・知らな・・・い・・。だか・・ら・・・逃げて・・・・いいの・・・ちが・・う・・・?」


彼女達は『真実』を知らない。

私は・・・何も・・・してない・・・。

彼女達はそそくさと走って屋上から出て行った。

ジロちゃんを恐れて。

ジロちゃんは扉を一度睨んでからこちらへ来た。


「よっと・・・・。」


突然抱きあげられた。

びっくりしたけど抵抗する力もない。


「大丈夫〜?」

「・・・!」

「ん?どうしたの?」


よかった・・・いつものジロちゃんだ・・・。


「ありがと・・・・。」

「俺が好きでやったの!少し傷に響くかもだけど急ぐから我慢してほCな。」


ジロちゃんは屋上から出た。

私を抱えて、走って。


「っつ・・・!」


傷がジンジンする。

女の力って・・・思ったよりもすごいのね・・・・。


「・・・我慢して?」


ジロちゃんは私のために走ってくれてる。

だから我慢しなきゃ・・・。

屋上から出て

校舎から出て

学校から出て

着いた先は小さな病院。


「ここね、訳あり患者のみのお医者さん。大きい病院はヤでしょ?」


単純に嬉しかった。

私のために色々としてくれるジロちゃんが。

疑問だった。

それは――――。


「何で・・・?」

「んー?」

「何で・・私の・・た・・め・・。」


あっ・・・ダメ・・・!

視界がぼやける・・・!

あと少し・・・少しだけ・・・!

私はパタリと意識を失った。







授業中に女子5人が集まって屋上に向かうのを見たとき不思議だった。

今、屋上にいるのはちゃんだけ。


「まさか・・・!」


気付いたのと走り出したのは同時だった。

そのときは別に何も考えていなかった。

ただ助けなきゃって思った。

屋上をそっと覗くとちゃんは殴られていた。

5人を相手にただ抵抗するだけ。

相手を殴ろうとしない。

助けを求めようともしない。

だから助けなきゃいけないと思った。

一人のちゃんを。

俺は一度突き放された。

だから何。

守るって決めたもん。

一人のちゃんを。

音を立てないように屋上に入る。

そこから走った。

また、音をたてないように。

一人の女子が手を振り上げた。

その手をパシッと音をたてて掴む。


「やっぱ俺、ちゃんと一緒にいた方がEみたい。」


自分でも冷たいと思う言葉を吐いて

ちゃんを忍足のお兄ちゃんのところに連れて行った。







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