言葉は心。

言葉はつながり。

言葉は悪。





信じるもの、その先に-4-





やっぱり、学校に行くのがイヤだった。

学校が楽しみだったのは昨日だけ。

でも行かなきゃいけないの。

約束だし・・・・何より逃げたくないの。

がいなくなって美鈴がいる朝練。


「どうぞ、侑士先輩!」


美鈴がレギュラーにタオルを渡しまわる。

もちろん笑顔付で。

・・・もう噂がまわってるのかな。

は藍川美鈴をいじめている』と。

私が小さくいればそれはもっと酷くなって広まるでしょう。

だからいつもどおりに過ごそう。


ちゃん、タオルちょーだい。」

「あ・・うん。どうぞ。」

「ありがとー!ね、一緒に教室行こ?」

「・・・・いいの・・・・?」

「俺がそうしたいんだって!」

「うん・・・ありがと・・・。」

「じゃ、待っててね!」


中3とは思えないくらいの笑みを浮かべるジロちゃん。

可愛いなぁ・・・。

ジロちゃんの瞳はしっかりしていた。

その瞳が直視できない。

昔からそう。

しっかりとした瞳を持ってる人の目を見れない。

咲人の瞳も見れなかった。

私が弱いから・・・・。

弱いから直視できない。

だから眼鏡をかけている。

何か・・・怖くて。


「・・・ちゃん・・・・ちゃん!」

「・・・!ごめん・・何・・・?」

「行こ?ボ〜ッとしちゃってるけど大丈夫?」

「ん・・・。大丈夫・・・大丈夫だから・・・。」


教室に行く勇気がない。

でも・・・恐れるだけじゃダメだよね。

もしかしたら・・・皆知らないかもしれないから。


ガラッ


「・・・!」


私の机は切り裂かれていた。

入った瞬間にわかるほど無残に。


ちゃん・・・。」

「・・もう、この机で勉強できないね・・・。」

「転校してきた子をイジメるなんてサイテー。」

「しかも本人否定してんでしょ?」

「藍川ちゃん、可愛いから妬んでんじゃないの?」

「えーでも、も結構可愛くない?」

もケガしてんでしょ?」

「アレだよ。あいつ独り占めしてぇんだろ。レギュラーを。」

「サイッテー。」


皆の言うことが全て聞こえてくる。

違うのに・・・私は何も・・してないのに・・・。

みんなの言葉が辛い。

心に突き刺さる。

突然、何も聞こえなくなった。


「辛かったら聞かなくていいよ。今は逃げてもいい。少しずつ向き合おーよ。」


ジロちゃんが耳をふさいでいた。

ジロちゃんの言葉だけが聞こえる。


「屋上に行こ?誰の悪口も聞こえないところに。」

「ん・・・・。」


幸い屋上には誰もいなかった。

心地よい風が吹き抜ける。


「辛い?」

「・・・女子にはよく言われてた・・・でも・・・酷くなってて・・・・やっぱり辛い・・・!」

「ずっと・・・どうしてたの?」

「いつも・・・に話してた。だけど・・・もう話せない・・・。」


は最後まで聞いてくれた。

相槌を打ちながら全部。

でも・・・もうできない。

は今病院にいる。

そして・・・もう巻き込みたくない。


「じゃぁ、俺に話してよ?」

「え・・・?」

「辛いこと、全部言ってよ。」

「・・・ダメ・・・。」

「Eから!」


渋々と頷いた。

でも・・ジロちゃん。

私話さないよ。

辛いから話す。

それって逃げてるもの。

私、逃げたくないんだ。


「・・・・今までずっと逃げてたの。っていう場所に。だけど・・・もう逃げちゃダメなの・・・。が私刑を受けて・・・私もう逃げちゃダメって思ったの。」

「・・じゃぁどうするの?」

「わかんない・・・・。」


でも・・・呼び出されても行く。

部活を休んだりはしない。

勿論、学校も休まない。


「ねぇ、ジロちゃん・・・。」

「何ー?」

「・・・あまり私に関わらないほうがいい。」


わからないからこそ突き放す。

頼りたくない・・・。

信じられないの・・・。

今の皆を。


ちゃん・・・・?」

「危ないから。ジロちゃんが危険な目にあってほしくないから・・・・関わらないで。」


冷たい声で伝えた。

そして・・・ジロちゃんは屋上から出て行った。


「これで・・・いいんだよね?咲人。」



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