初めて思った。
学校に行くのが怖くないって。
でもその日から――――。
信じるもの、その先に-3-
「新しい・・・・マネ?」
「あぁ、1年の藍川美鈴だ。」
後輩・・・。
彼女は青学から来たらしい。
来たのはつい最近。
青学でもマネをしてたから仕事は大丈夫だと。
「なら、こっちへ来て。場所を説明するわ。」
「はいっ!」
第一印象は可愛い子。
でも変な感じがした。
何か・・・猫をかぶってそうな感じ。
「ここからドリンクのボトルを持っていくの。・・・藍川さん?」
「・・・あ、すみません。少しボ〜っとしてました。あと美鈴でいいですよ。」
にっこり笑う彼女。
「じゃぁ、もう一度説明・・・・。」
「あのっ!」
「何?」
「先輩って・・・来られないんですか?」
答えが出なかった。
でも・・・・この子も関係ないわけじゃない・・・・。
「はケガで休みよ。」
「何かあったんですか?」
「少しね。気にしないで。」
「どうしてですか?」
「美鈴は知らないほうがいいの。さ、仕事しましょ。」
「・・・先輩は誰かに私刑されたから、ですか?」
思わず仕事をしていた手を止めてしまった。
「知ってたなら聞く必要ないでしょ?」
「すみません。でも、乾先輩から聞いていたんです。先輩は先輩から私刑されたって。」
「え・・・・?」
違う・・・!
確かには私のせいであぁなった・・・!
でも私は何もしてないわ・・・・!
「先輩は先輩じゃないと言ってる、と聞きました。」
「違う・・・違うわっ!」
ガッシャーン
テーブルの上のグラスが私の方へ落ちた。
その音が聞こえたのか皆が駆けつけてくる。
「どうしたん?」
「先輩が突然投げたんですぅ・・・・!」
私への態度とは違って媚を売り始めた。
おまけに涙を流している。
「違っ・・・つぅ・・・!」
脹脛から血が流れている。
どうやらグラスが割れたとき跳ね返って切れたらしい。
「ちゃん大丈夫?」
「痛いけどたいしたことないわ・・・・・。救急箱をとってもらってもいい?」
ジロちゃんに救急箱を取ってもらって手当てをする。
もう切り傷の手当てもなれた。
ホント・・・・イヤだ・・・・。
「先輩・・・自業自得・・・です・・・・。自分で・・・投げたんです・・・から。」
「本当か?」
「・・・・違う。」
小声でしか答えられなかった。
皆に届いたかは分からないけど。
それが届いたのかジロちゃんが口を開いた。
「ちゃんが理由なくそんなことしないよ。跡部たちはずっと一緒だったちゃんよりも今日入ってきた美鈴ちゃんを信じるの?」
「が違う言うたんか?」
「言ったよ。俺には聞こえたC」
「のこともがしたんやったら話しがつく。がやったゆう証拠もやっとらんゆう証拠もあらへんしな。」
「うっ・・・ひっく・・・・。」
「美鈴・・・・。もしグラスが落ちただけなら、美鈴がこんなに泣くか?」
違う・・・・!
これは・・・演技よ・・・!
でも・・・ここで・・・泣いちゃダメ・・・!
辛くても泣いちゃダメなの・・・。
泣いたら・・・それこそ美鈴と同じになっちゃう・・・。
美鈴みたいに泣いて味方をつけたくないわ・・・。
皆の話を聞きながらグラスを片付け始める。
「俺は・・・ちゃんを信じる。皆が美鈴ちゃんを信じても。」
「裏切るのか?美鈴や俺たちを。」
「裏切ってなんかないC。俺もとから美鈴ちゃんを信じてないもん。」
美鈴の表情が驚愕に変わる。
皆を味方にでもつけれると思ったのかしら・・・。
「そ・・・んな・・・私が・・・嘘をついてるって・・・言いたいんですか・・・・?」
「俺はちゃんを信じる。それだけだよ。」
ジロちゃんが真剣だった。
皆が私に対して敵意を向けてる中で1人だけ味方だった。
嬉しいのに・・・・
感謝しなきゃいけないのに・・・・
申し訳ないって気持ちになる・・・・
ポツリとつぶやいた。
「皆は・・・守るって・・・言ってくれたよね・・・・?」
「がこんなんやるなんて思おてなかったからや。」
頭のおくでピキンと何かが割れた。
もう・・・この人たちは私の言葉を信じない。
でも・・・いつか信じてくれるって信じてもいいよね?
いくら・・・時間がかかっても。
「皆が・・・信じてくれるまで・・・頑張るから。」
私は私の道を行く。
皆が事実を知ってもらうまで。
辛いことにも耐えなきゃ・・・・。
そうだよね、咲人。
約束だもの。
『どんなに辛くても学校へ行く』って。
パタン
部室の扉の音が鳴る。
私はその外側にいた。
「ちゃん!」
追いかけてくるのは彼だけ。
私は明日学校で笑えるのかな。
皆と一緒に。
誰か・・・これが『夢』って証明して。
タチの悪い夢だって。
「うっ・・・・・・くっ・・・・ひっく・・・うっ・・・・!」
NEXT